犬も血液サラサラが大切な理由
『○○を食べると血液がサラサラになる』 『健康寿命を延ばすためには、血液サラサラが命!』 など、人の医療分野では、『血液をいかにサラサラにするか?』が、コラムや番組でも多く取り扱われ、注目を集めています。 これは犬でも同じであり、良質な血液・血流を保つことは、健康長寿に結びつく可能性があります。 この記事では、犬の血液や血流について、サラサラにするとよいと言われる理由や、おすすめの食材などをお伝えしています。 『愛犬といつまでも一緒に、かつ健康的に過ごしたい!』という飼い主さんは、ぜひ読んでみてくださいね。
愛犬の血液サラサラにはメリットがいっぱい!
愛犬の血液がサラサラである状態には、メリットがたくさんあります。 あげればきりがないですが、例えば、
●心疾患の予防
●認知機能の改善
●血栓予防
●血圧が下がる
●太りづらくなる
●免疫力の向上
…などといった多くの効果があります。 そもそも、血液がサラサラな状態とは、血中に糖や脂質が過剰に含まれず、酸素や栄養素の運搬がスムーズに行われている状態のことです。 からだに必要な物質を滞りなく運べる状態は、想像するだけでも、健康的なかんじがしますよね。 一方で、血液がドロドロな状態では、血流が滞ってしまう可能性があります。 これにより、血栓ができやすくなる、免疫力の低下、むくみや冷え…といった状態を引き起こします。
犬の血液は弱アルカリ性
通常、犬の血液は弱アルカリ性の非常に狭い範囲に維持をされています。 (pH:7.40±0.05) これが、ストレスや食生活などにより、酸性にかたむいてしまうこと(アシドーシス)で、ドロドロ血液に拍車をかける可能性があります。 また、糖尿病や腎臓トラブルなど病気があることで、からだが酸性にかたむくこともあります。 なお、血液のpHは、血液ガス分析の装置によって測定をするため、酸性・アルカリ性を見た目などで正確に測定することはできません。
犬が血液をサラサラにするためにできること~食事管理
血液をサラサラにすることができる代表的な食事としては、アジやマグロ・イワシなどの青魚があります。 青魚には、ω3系不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、DHA、EPAなど)が豊富に含まれており、これらは、
●血液をサラサラにする
●中性脂肪、コレステロール値を下げる
●抗炎症作用
●血圧を下げる
●動脈硬化防止
●血栓防止
●血流改善
…という多くの効果があります。 なお、ω3系不飽和脂肪酸は、体内で作ることができないために、食事から摂取する必要がある脂肪酸で、『必須脂肪酸』と呼ばれています。 (※αリノレン酸からEPA、DHAは作られるので、これは必須脂肪酸と呼ばないこともあります。) また、EPAにおいては、血液中の赤血球の膜の成分として利用されているため、結果として赤血球自体が柔軟性を持ち、血液粘度が下がる(血液がサラサラになる)といった効果もあります。 青魚を上手に摂取するためには、お刺身をあげたり、茹でる・焼くなどして、ドッグフードにトッピングするとよいでしょう。 手軽に食生活に取り入れたい方は、魚油が添加されているドッグフードを選んでみてもいいかもしれませんが、魚油は酸化しやすいため、小袋包装のものを選びましょう。 ω3系不飽和脂肪酸は、オイルとしての摂取もおすすめです。 規定量は特にありませんが、小型犬ならスプーン1杯程度を、1日の食事に添加するといいですね。 ただし、あくまでも『あぶら』ということを忘れず、摂りすぎには注意をしましょう。 また、納豆にもω3系不飽和脂肪酸は含まれています。 ナットウキナーゼという酵素成分によっても血液サラサラになる効果があるため、苦手ではないワンちゃんは、積極的な摂取がおすすめです。 こちらも量に規定はありませんが、小型犬であれば1/3~1/2パック程度を食べるといいですね。 なお、初めて食べるときは、少量からにし、便の様子などをチェックしながら与えましょう。
タマネギはNG
人では、血液をサラサラにする食材として、タマネギの摂取が推奨されていますが、犬ではNGです。 というのも、犬はタマネギを食べることで、中毒症状を引き起こす可能性があるからです。 少量でも食べてしまった場合には、1日~数日後に、
●ふらふらする
●血尿をする
●下痢や嘔吐
●虚脱
などといった貧血症状を示す場合があります。 少量でも、また茹でたものや、乾燥加工されたものであっても中毒を引き起こす可能性があります。 重篤化したケースでは死亡することもあるため、誤食してしまった場合には、様子を見ずに、動物病院で吐かせる処置を受けましょう。 なお、タマネギ以外にも、長ネギやニンニク、ニラやエシャロットといった野菜もNGですので、気をつけるようにしましょうね。
愛犬の血液サラサラには、水を飲むこともおすすめ
血栓予防には、ある程度の飲水も必要とされています。 一気に飲むというより、こまめな飲水、特に夜間に摂取することが大切です。 ただ、愛犬に「水を飲んでね!」と伝えても、なかなか飲んではくれないですよね… そんなときには、ウェットフードを与えてみてください。 ウェットフードは成分の70~80%程度が水分と言われており、食べることで十分な水分摂取が可能となります。 また、嗜好性も良いため、愛犬に負担をかけずに水分をあげることができます。 他にも、
●ぬるま湯にする
●水飲み器を変える
●ウォーターファウンテンを用いる
●ちゅ~るなどで味をつける
●手からあげる
●部屋のいろいろな場所に配置する
●外であげる
…など、さまざまな方法で飲んでくれる可能性が広がります。 ぜひ、試してみてくださいね。 なお、無理にシリンジなどであげる方もいられますが、高齢犬などで介助が必要な場合を除いては、特にする必要はありません。 むしろ、誤飲をしてしまう可能性もあり、注意が必要です。
サプリメントとしての摂取もよい
食事に好き嫌いがある子、また飲水が難しい場合には、サプリメントとしての摂取もおすすめです。 魚油やEPA、DHAが含まれたタイプのサプリメントは市場にも多く出回っており、手軽に摂取ができます。 納豆パウダーなど、食事にふりかけるだけのものもありますね。 ただ、サプリメントは効果が出るまでに時間がかかること、また薬のようにかならずしも効果が出るとは限らないことに注意が必要です。 魚油の独特のにおいを嫌う子もいますので、愛犬にあったものを選ぶようにしましょうね。
【まとめ】犬も血液サラサラが大切~血液・血流改善で健康長寿を目指そう
人と同様に、ワンちゃんも血液サラサラになるよう、工夫した食生活を送るようにしましょう。 特に、ω3系不飽和脂肪酸の摂取が大切であり、これは青魚に多く含まれています。 オイルやサプリメントとして摂取をしてもいいですね。 健康的な食生活と合わせて、適度な運動も必要です。 ぜひ、おいしい食生活と楽しいお散歩・スキンシップの時間をとってくださいね!
- 浜崎智仁,小林悟,浦風雅春,矢野三郎,熊谷朗、エイコサペンタエン酸 (EPA) が赤血球変形能を改善する機序について,血液と脈管,1985,16巻1号
- 佐野忠士,輸液超入門,interzoo,2016,p38
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p105-p106
執筆先生 都内獣医科大学卒業 大動物(牛や馬)小動物(犬や猫) 現在ペットの相談業務などに従事