※まぐろの部位に関しまして企業秘密につき伏字となっております。
【まぐろ眼窩油 による免疫増強作用の検討】
本研究ではまぐろ眼窩油 NIYによる「ガン抑制」効果に関する研究の一環として、実験的免疫不全誘導マウスの抗体産生能に及ぼす影響について検討した。
実験動物
12 週齢の BALB/cAJcl 雄マウスを本実験に用いた。動物の飼育に関しては、12時間おきの明暗サイクル、温度、湿度が制御された環境下で餌および水は自由摂取とし、AIN93G 餌料による 1 週間の馴化後、13 週齢で実験に供した。
本実験では免疫不全状態を作出するため、マイトマイシン C(MMC)の投与を実施した。MMC (協和発酵)は生理食塩水に溶解して 13 週齢の BALB/cAJcl 雄マウスにMMC1mg/kg 体重の用量で 7 日間連続して腹腔内注射した。対照群には等量の生理食塩水を投与した。1 群 10 匹とし、MMC 腹腔内投与終了後 1 から 4 週目における脾臓重量の測定と抗体産生細胞(PFC)の検出を行った。また、フローサイトメトリーにより、MMC 投与1週間後に脾臓中の CD19 陽性細胞比を解析した。
本実験では、PFC の誘導にヒツジ赤血球を抗原として用いた。ヒツジ赤血球(SRBC)は、大過剰の生理食塩水で 3回洗浄後、マウスに 1×108個を尾静脈投与した。4日後、これらのマウス脾細胞は 2 回遠心分離(500g、5 分)し、10%Fetal Calf Serum -Roswell Park Memorial Institute1640 培地 10mL で再度懸濁した。脾細胞数はチュルク染色液を用いて測定した。SRBCに対するPFCの測定はJerneらの方法にしたがって行った。
脾細胞浮遊液 100μL にイーグル最小必須(Eagle'sMEM)培地 800μL、8%ヒツジ赤血球懸濁液 100μL およびジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン 100μL を加えて、全容を 1.1mL とした。これらを 37℃、5%CO2、2 時間培養し、モルモット血清を加え、さらに 1 時間インキュベートした。シャーレ上に生じたヒツジ赤血球の溶血斑は目視で確認した。AIN93G を元に、標準の大豆油をまぐろ眼窩油 に餌料重量に対して 0.5、1 および2%(w/w)となるように置換し試験餌料とした。MMC 処置後から試験餌料を2給餌した。
結果および考察
本実験では、脾細胞(1×106個)における PFC 産生能におよぼすまぐろ眼窩油給 餌
の影響について MMC 免疫抑制マウスを用いて評価した。予備実験から MMC 投与後
1 週間においては脾細胞(1×106個)中に PFC は検出されなかった。(表 1)。また、1
週間目における脾臓重量は有意に減少していた。MMC 投与1週間後に脾臓中のCD19 陽性細胞比はほとんど変化が見られなかった(表 2)。
以上から MMC 投与後約 2 週間目から回復傾向にあることが確認できた。したがって
PFC の産生能の測定は MMC 最終投与から 2 週間目に行うこととした。
その結果、対照群における PFC は 409±38(平均±標準偏差)個検出されたに対して、対照群 MMC は 112±18 個で、MMC による免疫抑制が確実に誘起されていることが確認できた(表 3)。まぐろ眼窩油 群では対照 MMC 群に比べ、量依存的に有意に回復が早く、まぐろ眼窩油 2.0%MMC 群は対照 MMC 群に比べ倍近く回復していることが分かる。これらの結果は、MMC によって低下した PFC 産生能がまぐろ の 給餌によって回復を早めることを示している。一方、脾臓重量については各群間について、有意な差はみられなかった。
表 1. MMC 免疫抑制マウスにおける MMC 投与後の脾臓重量および抗体産生能に及ぼす影響
| 脾臓重量()mg | PFC(個/1×106脾臓細胞) |
対照群 | 95.6±10.4a | 428±56a |
MMC-1週群 | 48.7±9.7b | 0b |
MMC-2週群 | 78.4±18.7a | 106±19c |
MMC-3週群 | 84.8±21.3a | 278±23c |
MMC-4週群 | 81.1±16.6a | 345±74a |
n=10, 平均値±標準偏差
異なるアルファベット間で p<0.01
【食物アレルギー感作モデルを用いた離乳直後マウスへのまぐろ眼窩油給 餌 の影響】
はじめに
食物アレルギーとは、腸管(小腸)である程度消化、分解されたものが、「抗原」となって吸収されて、「抗体」を作った結果引き起こされる。
食物アレルギーと現代の食生活の変化は大きく関係している。
すなわち
① 乳幼児の「人工栄養児」(母乳ではなく、ミルクで育てていること)が多い。
② 動物性食品、特に「動物性タンパク質」の摂取量が増加している。
③ 食品添加物など、食品本来の成分以外のものを摂取することが多くなってきている。
現代では明らかに食物アレルギーが確実に増加していると言わざるを得ない。また、食物アレルギーによって、幼少時から「アトピー性皮膚炎」などに罹患している乳幼児の多くは、その後も引き続き他のアレルギーも惹起しやすい。
食物アレルギーは、食品として摂取した抗原が、未分解のまま消化管経由で体内に取り込まれ、免疫系を刺激することが引き金となる。しかし、正常に離乳した場合の多くは,食品によるアレルギー症状を呈することはまれである。現在は離乳直後から成人食のミニチュア版とでもいえる食品群の摂取が良いことでもあるかのように信じられている。しかし、太古からほんの100年くらい前まで、飢餓に喘ぐ生活を強いられてきた多くのヒトは、現在のように離乳直後から様々なタンパク質の洗礼を受けることはなかった。
昭和型あるいは旧日本人型とでも比喩できる、穀物に魚介類などのタンパク質を摂取する旧来の食事は、なかなか現在の社会において実践することは難しい。ましてや、数万年も,数十万年もなじんできたわが国における魚介類食を放棄したかのような、離乳食の摂取は多少なりともアレルギー、アトピー発症に関与していることは疑う余地がない。そこで、離乳直後マウスを用いて、まぐろ眼窩 油 を給餌したときの、免疫応答を抑制する「経口免疫寛容」が誘導について検討することは非常に意義のあることと考える。
そこで、本実験では、一般に入手可能な近交系離乳直後マウスを用いて、アレルギーを誘発する可能性がタンパク質の経口投与によりIgE応答を誘導し、まぐろ眼窩 油 の投与による感作抑制能について評価した。
実験動物
マウスは、近郊系およびコンジェニツク系統の8〜9週齢の雌を用いた。経口抗原に対するIgE応答はマウスの系統に強く依存していることが知られている。本研究では、リゾチームを抗原タンパク質とした場合、IgE抗体が効率よく産生されるB10A.Bcgr系を用いることにした。
飼育
動物はB10A雌マウス2〜3週齢を用いた。カゼインをタンパク質原とする対照群用餌料AIN93Gによる7日間の予備飼育後、試験餌各群7匹ずつ平均体重および標準偏差が等しくなるように分けた。本飼育期間中毎日、飼料摂取量および体重を測定した。動物ケージ設置室は、12時間ごとの明暗、室温23±2℃、湿度50±5%に調節し、8匹ずつポリカーボネート製ケージで飼育した。
試験餌料
試験飼料はAIN93Gをもとに脂質原である大豆油の0.5、1.0および2.0%をまぐろまぐろ 眼窩油に置換して、摂食量向上を目的に固形化試料を調製した。試験餌料および水は自由摂取とした。5週齢より試験餌料給餌開始後12週にわたって飼育した。実験期間中(初期は2週間)4週間に1度血液を採血した。採血は,マウスをエーテルで軽く麻酔して,マウスの背中側を持ち、頭部から頚部を固定し、ゴムキャップ装着ガラス針で、眼窩静脈洞を刺し,緩やかに吸引採血した。
抗原の投与
精製リゾチーム25mgを250μLの生理食塩水に溶解し、軽微にイソフルランで麻酔したマウスにゾンデを用いて1日1回7日間連続で胃に投与した。胃内投与終了1週間後より採血を行った。
ELISAによる抗原特異的IgE抗体の測定
血清中の抗原特異的IgE抗体は、市販の酵素標識した抗マウスIgEを用いたELISAにより測定した。
具体的には、精製リゾチーム(25g/mg程度)をELISAプレートにコートし、ブロッキング、洗浄したのち、100倍に生理食塩水で希釈したマウス血清、と反応させ、さらに酵素標識抗マウスIgEと反応させた。次いで洗浄後、ペルオキシダーゼの基質を加え、30分間反応させて。その後、希硫酸を加えて酵素反応を停止した。酵素反応生成物(黄褐色)をマイクロプレートリーダーで吸光値(A492nm)を求めることによってプレートに結合したIgEを検出した。試験物質の投与、非投与群を設けて比較することにより、その効果を評価した。
結果
血清の抗リゾチーム抗体を測定した結果を以下の図に示す。
図 マウス血清中抗リゾチーム抗体産生量に及ぼすマグロ眼窩油 給餌 の影響
平均値±標準偏差(n=8) *p<0.05 , ** p<0.01 (Dunnett's test)
全群で初期から抗体産生量は直線的に増加した。まぐろ眼窩油給餌 群では比例し抗体産生の抑制傾向が見られた。8週以降においてまぐろ眼窩 油1.0%群と2.0%群では対照群に比べ有意に抗体産生量は抑制されていた。まぐろ眼窩油 1.0%群と2.0%群で12-16週では抗体産生量が逆転している。以上から、離乳直後からまぐろ眼 窩油を給餌し続けていることは、量依存的に抗体量の低減につながる可能性が高い。また、まぐろ眼窩 油 1.0%群と2.0%群では12-16週では抗体産生量が逆転していることから、長期的摂取においては、まぐろ眼 窩油 1.0%群で抗体抑制産生は十分とも言える。